終わらないで Fantasy

どんな宝石より 心奪われたんだ

【ネタバレあり】ミュージカル「BE MORE CHILL(ビー・モア・チル)」レポ

どうも。

 

 

新国立劇場中劇場にて行われていたミュージカル「BE MORE CHILL」を観に行った。

 

この作品は同名の小説を原作として2015年に初上演された比較的新しいミュージカルで、YouTubeの動画がきっかけでバズって世界中で上演されているらしい。今回が日本初上演のみならずアジア初上演らしい。演出にはオリジナル作品の演出家さんを起用するという気合いの入れようである。

 

主な登場人物は以下の通り。(私の解釈なので、何か間違いがあればコメントで優しく教えてください)

ジェレミー(薮くん)…冴えないゲーマー高校生。高校で陽キャ生徒たちにいじめられている。この状況を打破したいとは思っている。

マイケル(加藤清史郎くん)…ジェレミーの唯一の友であり親友。ゲーマー高校生。古い飲み物を集めるのが趣味。負け組陰キャなのを受け入れている。

クリスティーン(井上小百合ちゃん)…とにかく演劇が大好きな学園のマドンナ。ちょっと突飛なところもあり、周囲から浮いている側面も。

リッチ(木戸邑弥さん)陽キャないじめっ子男子生徒。ジェレミーとマイケルを執拗にいじめているが…?

ジェイク(内海啓貴さん)…キザで浮気性のモテ男生徒。クロエの元カレ。今度はクリスティーンをターゲットに定めている様子。

ブルック(斎藤瑠希さん)陽キャで人気のある女子生徒。クロエと仲良し。

クロエ(ラリソン彩華さん)陽キャな女子生徒。ジェイクの元カノ。ブルックと仲良さそうだが…?

ジェナ(ダンドイ舞莉花さん)…ゴシップ大好きな女子生徒。ゴシップを話してばかりなので他の生徒からは煙たがられている。

ジェレミーの父(ブラザートムさん)…最近離婚した。在宅勤務者なのをいいことにズボンを履かない。

スクイップ(横山だいすけさん)…スクイップを服用したものだけが見える、スクイップの形式的な姿。ジェレミー目線ではキアヌ・リーヴスに似ているらしい。服用したジェレミーに指示を出したり、言動を操作したりする。

 

公式サイトでのあらすじは以下の通り。

ジェレミー(薮くん)ニュージャージー州にある高校に通う冴えない男の子。同級生のクリスティーン(井上小百合ちゃん)に密かに想いを寄せる彼は、ある日、学校のいじめっ子に日本製の超クールになれる「SQUIP=スクイップ」‹Super Quantum Unit Intel Processor›というスーパーコンピューター入りの錠剤の存在を聞く。親友のマイケル(加藤清史郎くん)にも相談し悩んだ末、この錠剤を手に入れたジェレミーはそれを飲むのだった。
そのスクイップ(横山だいすけさん)のお陰で一時は何もかも思い通りになり、人気者になってきたジェレミーだったが、次第にスクイップに乗っ取られ、マイケルとの仲も悪くなり、人生が空回りし始める・・・

 

wikipediaを参考にしたあらすじは以下の通り(ストーリーのネタバレがあります。今後観劇予定の方の閲覧は自己責任でお願いします)(自動翻訳をベースにしているので日本語が多少変なのは目をつぶってください)

 

高校生のジェレミーは社会的に疎外されていた。彼は最近離婚した父親(ブラザートムさん)と暮らしているが、父親は自宅で働いており、家の中でズボンを履かないことでジェレミーを不快にさせていた。学校でジェレミーは、バックパックに「boyf」と書く人気生徒のリッチ(木戸邑弥さん)にいじめられた。彼の親友・マイケル(リッチがバックパックに「Riends」と書いた)は、「敗者になっても大丈夫だ」とジェレミーを慰めようとした。ジェレミーが想いを寄せるクリスティーンは、学校の演劇に参加し、彼も同様に参加することを決めた。ジェレミーは、誰かが自分を助けてくれるのか疑問に思っていた。

彼らが最初の演劇のリハーサルが始まるのを待っている間、クリスティーンはジェレミーに演劇への愛を告白した。演劇は異なる人々を演じることができ、常に何を言ってどう行動すべきかが分かっているから。演劇監督のレイエスブラザートムさん)は、「学校の演劇が黙示録的な未来を舞台にした「真夏の夜の夢」であり、「A Midsummer Nightmare (About Zombies)」と改題される」とを明らかにした。リハーサル中、人気少年の一人であるジェイク(内海啓貴さん)はクリスティーンといちゃつくと、ジェレミーを嫉妬させた。

ジェレミーはお手洗いでリッチと対峙し、リッチはジェレミーに人気上昇の経緯を語った。「ユーザーの脳の中に埋め込んで、ユーザーに何をすべきか、何を言うべきかを指示するコンピュータを含むスクイップと呼ばれる錠剤を服用した」と。リッチはジェレミーがクールになるために買うことを提案した。

マイケルとビデオゲームをしながら、ジェレミーはリッチが語ったスクイップについて彼に話した。父親とのぎこちない会話の後、ジェレミーはスクイップをチェックすることにした。ジェレミーはマイケルに、「何が起ころうとも、自分達は常にチームだ」と約束した。

2人はPayless ShoeSourceのディーラー(ブラザートムさん)からスクイップを購入するためにモールを訪れた。ジェレミーは指示通り、緑のマウンテンデューで飲み込んだ。スクイップが起動すると、ジェレミーはクリスティーンとジェイクの前で発作を起こした。スクイップは、ジェレミーの外見、性格、行動を批判し、「あなたのすべてがひどい」と伝えた。スクイップは彼に新しいエミネムシャツを買うために店に行くように命じた。ジェレミーは女性のシャツを拾い上げ、学校から人気のある2人の女の子、ブルック(斎藤瑠希さん)クロエ(ラリソン彩華さん)に出会い、スクイップはジェレミーが2人と仲良くなるための物語を捏造するのを手伝った。彼女たちはジェレミーに家に送っていくと申し出、スクイップはこれを受け入れるよう要求したが、ジェレミーはマイケルをショッピングモールに残したくないので断った。彼女たちは立ち去り、スクイップはジェレミーに嘘をつき、マイケルがモールを去ったことを告げた。スクイップはジェレミーに「社会的地位を改善するためには、与えるすべての命令に従う必要がある」と告げた。

翌日、ジェレミーは自信を取り戻し学校に向かった。スクイップは、彼の周りの学生たちの精神を掘り下げ、ジェレミーに彼らの恐怖と不安についての洞察を伝えた。ジェレミーのスクイップはリッチのスクイップと同期し、即座に友達になった。ジェレミーは自信を持って芝居のリハーサルに向かった。クリスティーンはジェレミーに、ジェイクに対する自分の気持ちを話した。

その後、スクイップはジェレミーに、「クリスティーンの社会的地位が劇的に向上するまでジェレミーとデートしない」と告げた。ジェレミーに興味のあるブルックを人気への足がかりとして使うよう励まし、ジェイクはクリスティーンに自分の家に来るように頼んだ。圧倒されたジェレミーは、スクイップに数分間シャットダウンするように頼んだ。すぐにジェレミーはマイケルを見て高揚するが、マイケルは「ジェレミーが一日中自分を無視していた」と述べた。スクイップは、マイケルがジェレミーの視界に入らないために「視神経遮断」を使用しており、より人気を得るためには「スクイップをアップグレードする必要がある」と説明した。ジェレミーは最終的に自分が敗者であることにうんざりしていると判断し、視神経遮断をオンにし、マイケルを視界から消した。(1幕)

 

ハロウィーンで、ジェイクは大規模なパーティーを主催した。クリスティーンはジュリエットプリンセスの衣装を着て到着し、ジェイクを喜ばせようとしたが、彼はパーティーのために彼女を脇に追いやった。ジェレミーはブルックに会いに来るが、ブルックに嫉妬するクロエはジェレミーを誘惑した。ジェレミーは居心地が悪くて逃げようとしたが、スクイップはクロエがジェレミーと仲良くなるため、彼にその状況にとどまるよう強制した。クロエはまた、ジェレミーにアルコールを飲ませてスクイップを誤動作させ、彼とセックスをしたふりをしてジェイクを怒らせ、ブルックの心を壊した。

ジェイクたちから逃げ出したジェレミーはバスルームに駆け込み、そこでパーティーを墜落させたマイケルを見つけた。マイケルはジェレミーにスクイップの危険性を警告しようとし、「誰かが頭からそれを取り出そうと狂った後、精神病院に行き着いた」と説明した。ジェレミーは「マイケルが自分の人気に嫉妬している」と非難し、彼を敗者と呼んだ。マイケルは打ちのめされ、怒ってバスルームに閉じこもり、パニック発作と感覚過負荷に襲われ、親友で唯一の友の豹変を嘆いた。ジェレミーはスクイップの助けを借りずにクリスティーンに話しかけ、彼は自信に満ち溢れて彼女に告白した。ジェイクと別れた後、実存的危機に陥ったクリスティーンは告白を断った。

一方、リッチは必死にパーティーを回ってマウンテンデューレッドを人々に求めた。ジェレミーのスクイップはついに夜の出来事を再活性化し、レビューし、ジェレミーにすぐにパーティーを去るように促した。リッチは孤独で絶望的になり、スクイップに話しかけ、家に火をつけた。翌朝、学校一のゴシップ好きであるジェナ(ダンドイ舞莉花さん)は、リッチがパーティーの終わりにジェイクの家を焼き払ったことを皆に知らせ、リッチを病院に送り、ジェイクに逃げようとして窓から飛び降りて両足を骨折させた。このニュースは、SNSを通じて学校全体に広がった。

自宅でジェレミーは父親と対峙し、ジェレミーの新しい性格と態度の変化を指摘した。ジェレミーは離婚以来の父親の行動を叱責し、彼を敗者と呼んだ。ジェレミーの言葉に動揺した父親は、何かがおかしいこと、そして自分が責任を取らなければならないことに気づいた。彼はマイケルを訪ね、ジェレミーと縁を切らないように頼んだ。マイケルはしぶしぶ助けることに同意するが、ジェレミーの父親がズボンを履いてより良い父親になることを条件に提示した。

キャストが劇の準備をしているとき、ジェレミーはクリスティーンに出会い、クリスティーンは火事に動揺した。ジェレミーは自分が傷つけた人間関係に不満を抱いており、スクイップを怒って責めた。スクイップは代わりにそれを「人為的ミス」のせいにし、ジェレミーに、スクイップを提供することで、残りの学生、そして最終的には全世界の人々の生活を改善することができると伝えた。リッチのロッカーで、ジェレミーはスクイップでいっぱいの箱を見つけ、ジェレミーはそれをマウンテンデューのビーカーに注いだ。

劇中の舞台裏で、クリスティーンはスクイップの使用をめぐってジェレミーと対峙し、ジェレミーの計画を疑った。しかし、スクイップはすでに劇中の他の人を引き継ぎ始めていた。スクイップは、生徒の全体、そして全世界を同期させる意図を明らかにした。ジェレミーは、マウンテンデューはスクイップをアクティブにし、マウンテンデューレッドはスクイップをシャットダウンすることに気づいた。マイケルはマウンテンデューレッドのボトルを持って観客から再び現れ、ジェレミーに自分の行動を謝罪させた後にジェレミーに渡すが、スクイップに支配されたジェイクはそのほとんどを捨ててしまった。ジェレミーとマイケルは、クリスティーンがスクイップに支配されたことを明らかにして、その影響下でジェレミーへの愛を公言し、制御された学生を撃退した。しかし、ジェレミーはこれは自分が望んでいたものではないことに気付き、クリスティーンに残ったわずかなマウンテンデューレッドを飲ませた。これが連鎖反応を引き起こし、残りのスクイップを破壊した。

ジェレミーは病院で目を覚ました。同じ病室のリッチは誇らしげにバイセクシャルをジェレミーに公言し、本当の自分になる準備ができていることを話した。マイケルはジェレミーを訪ねて二人は仲直りし、父親もジェレミーを訪ね、より良い父親になることを告げた。ジェレミーは再びクリスティーンに告白すると、彼女はそれを受け入れ、彼にキスをした。スクイップはまだ生きていることが明かされ、頭の中からジェレミーを弱々しくからかうが、ジェレミーはそれを無視し、「頭の中のすべての声のうち、最も大きな声は僕の声だ」と喜んで宣言した。(2幕)

 

あらすじ長くなり過ぎた!すみません…。

 

ストーリーはSFのようなかなり非現実的な設定で、余計なリアルな感情移入をせずに見ることが出来た印象。変にリアリティある設定だと、感情移入していく中で「それはちょっとおかしくない?」とツッコミを入れたくなって物語を純粋に楽しめなかったりするんだよね。これはただの私の悪い癖なんだけど。いい意味で登場人物全員に共感がしにくかったのが、「観客」として見るのにちょうどよかった。

ぶっ飛んだ設定ながらも、「自分の人生は自分の心で切り拓け!」「本当に大切な友を大事にしろ!」的なメッセージは凄く伝わってきた。スクイップのおかげで好転したように見えた自分の人生が、終盤にスクイップの支配が広がることで一気に狂っていくことに気づいたジェレミーの恐怖はなかなかだと思う。あそこでジェレミーが「自分が望んだ人生はこれじゃない」と気づけて良かった。そしてあれだけジェレミーにぼろくそに言われても(ジェレミー父の頼みがあったとはいえ)ジェレミーに救いの手を差し伸べたマイケルの勇気と優しさに全米が泣いた

 

続いてキャストの皆さんについて!

驚かされたのが元乃木坂46井上小百合ちゃん。歌唱メンのイメージは無かったので、ここまで声が出るとは思わなかった。高音が少し不安定なところもあったが、地声で歌っている所は他のキャストさんに全く引けを取らない迫力だった。「天才てれびくん the STAGE」の伊藤理々杏ちゃんもだが、舞台における乃木坂46メンバーのスペックの高さには度々驚かされる。小百合ちゃんや理々杏ちゃんがこれくらい歌えるんだから、生田絵梨花ちゃんはどんなんなんだ…と思った。

圧倒されたのは横山だいすけさん。だいすけお兄さんとして歌のおにいさんを務めていらした横山さん。まさかここまで場を支配できるほどの歌唱が出来るとは…横山さんが出てくるだけで場の空気が変わったし、スクイップがジェレミーの周りをどんどん支配しているのが伝わってきた。

他にも、幅広い女性の役を演じられていた斎藤瑠希さん、ダンドイ舞莉花さん、ラリソン彩華さんもすごかった。キャラの演じ分けは勿論、主役級の圧巻の歌唱力は見事だった。もっとミュージカル女優として上に登りつめてほしいパフォーマンスをされるお三方だった。

薮くんはまたジョセフから進化を遂げていた。ジョセフを観た時に引っかかった「歌詞の聞き取りにくさ」が、今作ではだいぶ改善されていた。本当に歌詞が聞き取りやすかった。歌の表現の幅もまた広がっていて、歌声に表情が見えるようになってきた。ジョセフから数ヵ月でこの成長、どこまで伸びていくんだ…!?

 

新鮮だと感じたのが舞台装置。一般的に舞台では、そのストーリーの場所を物理的なセットで構築するのが多いイメージなのだが、今作では椅子やテーブル等は出てくるが、風景は後ろに大きく置かれた巨大モニターでネオン調の線で描いて表現していた。これが非現実的な設定の気味の悪さを助長していて、いい味出していた。

モニターがかなり大きかったから、ステージがその分かなり小さく見えた。別作品ではかなり奥行きのあるセットを組んでいたからなおさら。同じ劇場でもここまで作品によってステージングが変わるのか…実に面白い。

 

正直に言うと、私は観劇前の時点でこの作品にあまり期待していなかった。一つは、「下ネタが多い」という前評判を聞いていて、下ネタの多い海外作品と私自身の好みとの相性が悪かった前例があったから。もう一つは、Twitterのフォロワーさんなら把握していると思うが)Twitterにおいて上演前から作品やキャストへの誹謗中傷を厭わないアメリカ版作品のファンの民度の低さにあきれ果てたから(ファンの質とコンテンツの質は相互作用しあう関係にあると考えているので)

確かに下ネタはところどころにあったが、以前苦手意識を抱いた某作品のようにしつこく安易な下ネタをゴリ押すようなことはなく、物語が展開していく中で気になるほどではなかった。父とマイケルがズボン履いてないシーンは正直目のやり場に困ったけど(笑)

後者に関してはここで下手に言及するとまたブログが炎上しかねないので省略。レポの本筋からはそれるし、上演中にそういう人たちが公演を妨害するみたいなマナー違反をしていた訳でもなかったので。下手にネガティブなことを書くと未観劇の読者の方にも変な先入観を与えかねないし。嫌な世界は知らない・関わらないに越したことはない…。

 

観劇前に抱いていた重い気持ちを、キャストのハイレベルなパフォーマンスと、深いメッセージを重く感じさせないぶっ飛んだストーリーが吹き飛ばしてくれた作品だった。これから地方公演が続くが、キャスト・スタッフさんが健康に最後まで駆け抜けられることを願ってやまない。

 

では。