終わらないで Fantasy

どんな宝石より 心奪われたんだ

舞台「裏切りの街(2022年版)」レポ

どうも。

 

髙木雄也くん主演舞台「裏切りの街」を観て来た。本作は三浦大輔さんの衝撃作で、2010年に田中圭さん主演で上演。その後2016年に池松壮亮さん主演でdTVでドラマ化&映画化された(因みにドラマ版はR15)。本来は2020年に髙木くん主演で再演予定だったが新型コロナウイルスの影響で全公演中止、2年越しの上演となった。

しかし、上演の10日ほど前に奥貫薫さんが新型コロナウイルスに感染。十分な稽古が難しいとのことで3月22日までは別の役で出演予定だった呉城久美さんが奥貫さんの役を演じ、呉城さんの役を日高ボブ美さんが務めた。その後、奥貫さんは回復し、23日以降は本来のキャスティングでの上演となった。私は26日に観劇をしたので、奥貫さんがいらっしゃるバージョンを観た。

 

公式サイト記載のストーリー(あらすじ)は以下の通り。

無気力なフリーター、菅原裕一(髙木くん)と平凡な専業主婦、橋本智子(奥貫さん)。菅原には長年つきあっている 彼女がいて、智子には結婚している夫がいる。その二人が出会い系サイトで知り合い、出会い、恋愛をし、逢引を繰り返す。二人はお互いに何かを求めるわけでもなく、この恋愛に発展性がないこともわかっている。お互い、大切だと思えるパートナーがいるにもかかわらず、「浮気」を繰り返す。会っている意味など考えず、「裏切る」という行為の罪悪感に苛まれることもなく、惰性ともいえる二人の関係は続いていく。そして、家に帰れば、お互いのパートナーに対して、別の愛情表現をする。それを壊す勇気などない。この先、自分はどうしたいのか。そんなことは考えない(ふりをした)まま、ただただ日常生活をこなしていく…。

 

登場人物は以下の通り。(参照:Wikipedia

菅原裕一(髙木くん)・・・東中野在住のフリーターと言う名のヒモ。マスコミ関係の「カトウイサム」と言う名前でマッチングアプリをやっている。

橋本智子(奥貫さん)・・・吉祥寺在住の40歳の専業主婦。夫婦仲は良くも悪くもなく、子供はいない。30歳の「トモ」と言う名前でマッチングアプリをやっている。

鈴木里美(萩原みのりさん)・・・裕一と同棲している恋人。会社員として働いている。

田村修(米村亮太朗さん)・・・浩二の部下。最近彼女に振られ、浩二に話を聞いてもらっている。同時に浩二からは妻(智子)の自慢話をよく聞いている。浩二とよく飲みに行ったり、ゴルフに行くほどの仲のようだが…?

今井伸二(中山求一郎さん)・・・裕一の友人。ウーバーイーツの配達員のアルバイトをしている。ヒモの裕一に助言をする。

根本裕子(呉城さん)・・・智子の妹。実家暮らしで母親の介護に明け暮れている。若い頃に結婚して上京した智子に良い感情を抱いていない。最近結婚した。

橋本浩二(村田秀亮(とろサーモン)さん)・・・智子の夫。普通のサラリーマン。食器洗い等家事は智子と分担している様子。子供を欲しがっている。

 

舞台の内容は以下の通り(参考:Wikipedia)。(以降ストーリーや演出のネタバレがあります。閲覧は自己責任でお願い致します。また、一度のみの観劇なので、時系列等に齟齬がある場合がございます)

 

夏、裕一は里美と東中野のアパートで同棲しながら“ヒモ男”として怠惰な生活を送っていた。ある日他の女とエッチがしたくなった裕一はマッチングアプリを通じて“トモ”と名乗る年上の女と会うため 荻窪へと向かった。お互いプロフィールを誤魔化して会った裕一と智子はしばらく会話をしたが、それだけで満足した彼女は連絡先を教えて帰ってしまった。

智子には夫の浩二がおり、浩二はいい人で夫婦生活に不満らしい不満もなく夜の営みもあったが、どこか物足りなさを感じていた。1週間後、裕一は智子の携帯電話に連絡して再会すると、彼女は人妻であることを打ち明け裕一も恋人がいることを告げた。会話で打ち解けた裕一と智子は、ショートメールでやり取りを続けた。

ある日、裕子が「婚約者が借金しているから200万円貸してほしい」と橋本家に転がり込んできた。「こういうときだけうちに来て」と智子が窘めるも、裕子は「そっちこそ実家を放って好きに生きているくせに」と突っかかった。見かねた浩二は裕子の口座に200万円振り込むことを約束した。

一方で、3回目の“デート”で裕一と智子は男女の関係となり、時々里美と浩二に嘘をついて2人で会っては気軽に不倫を楽しむようになった。(1幕)

秋、明らかに帰りが遅くなり、連絡すらも寄越さなくなった智子の浮気の疑いを浩二が問い詰めた。しかし智子は、「貴方がいつも飲みに行くと言っている「田村」と言う名前の部下は他の会社の同僚たちから聞いたことが無い」と反撃した。

その頃、いつも見た目に気を使わないことを裕一に指摘された里美は、「裕一が働いて生活費を稼いでくれれば自分のために使うお金を増やせるのに」とこれまでため込んでいた鬱憤を爆発させた。関係の修復は無理だと悟った裕一は智子に「彼女と別れようと思う。そっちも別れちゃえば?」とメールした。

後日、田村とゴルフに行くことになった浩二。早めに浩二を迎えに来て挨拶をしに来た田村を見て、田村が実在していたことに智子は驚いたと同時に、自分のこれまでの行いを悔やんだ。

いつものように智子に会った裕一は、彼女から「妊娠が発覚したが夫に内緒で堕ろすことにした」と告げられた。後日裕一は男のけじめとして智子の堕胎手術費用を出すと同時に不倫関係を終わらせることを告げ彼女もそれを受け入れた。しかし帰宅後智子は、母子手帳を見つけた浩二に妊娠を知られて「俺の子、生んでくれるよね?」と言われ、「堕ろす」とは言えずつい頷いてしまった。実は数日前智子のメールを覗いていた浩二は智子の浮気に気づいており、裕一を呼び出すことにしていた。

後日浩二から不倫関係がいつからかと尋ねられた裕一は“お腹の子は俺の子かも”と思いながらも勇気が出ず「1ヶ月前から」と答えた。安堵した浩二は、「実は俺も他の女と浮気してたから罪悪感を持たなくていい」と裕一に伝えてその場を後にした。裕一は智子との関係を解消するが、直後に伸二から「里美に誤って不倫の話をしてしまった」とのメールが届く。里美に謝る裕一だが、里美は「実は私も伸二と浮気した」と告白し、話し合いの末お互いに「もう浮気しない」と約束してよりを戻す。

裕子が借金の半分の100万円の返済のために智子のもとを訪れた。裕子は「夜職で浩二への借金返済のお金を稼いでいる」と伝え、「浩二は絶対に良い人だから大切にすべき」と智子に忠告した。

田村が再び橋本家を訪れ、智子の懐妊を祝福した。智子がリビングを後にし、田村が意気揚々と「お子さん、どっちに似ますかね?」と尋ねると、浩二は淡々と「あの子は俺には似ないよ」と言った。浩二の田村とのショートメールのやり取りの画面のあて名は「斎藤くん」、彼へのメッセージには「田村と言う部下になりすましてこうふるまえ」と言う指示が書かれていた。

その後、智子から裕一に何度も連絡するも、4か月間繋がることは無かった。

冬、すっかりお腹が大きくなった智子と裕一が荻窪で再会した。嘘を塗り固め、後に引けなくなってしまった2人の会話は平行線のまま。らちが明かないと感じ、帰ろうと試みるが、「もう少し、一緒にいましょうか」

 

 

私が観劇したのは3月26日で、初日から2週間ほど経った頃だったので、私より前に観劇をした人たちのレポやら感想やらがタイムラインにはゴロゴロ流れてきていた。特に、初日勢からのレポを超雑にまとめると「登場人物全員クズ」「裕一がとにかくキモイ」「尻」「観た人が歩んだ人生によって感想が全然変わってくる」「前貼り」「感想を語ろうとすると自分の人生観が出そうで嫌だ」「いい尻だった」と言った感じだった。

 

これを踏まえた上で一つ一つ嚙み砕いていこう。先ず、「登場人物全員クズ」について。これは確かにその通りだと思う。田村(斎藤)と裕子を除く全員の貞操観念が破綻している(なんなら裕子もダメ男好きそうだし)。そして全員が本来の男女関係と不倫・浮気関係の両方に意味をなんとなく見出しており、悪いこととすら思っていなさそうでもあった。彼らは自分の全てをさらけ出すことは決してせず、真実の中に嘘を混ぜて危なっかしい平衡状態を保っていた。正直、傍観者として(ここ大事)彼らのその後が気になってならない。1年後には智子の子供が生まれていて、絶対にひょんなきっかけでその平衡が崩れているに違いないから。

7人の中で最も理解に苦しむ(要するに無理)なのは伸二かな。裕一の浮気を里美にペラっちゃったことを平然と開き直っているし、裕一に里美との浮気関係がバレても里美との関係を続ける気満々なのも無理だった。と言うかそもそも20代後半で(バイトをサボっていないだけで)裕一と同じフリーターなのもなかなかキツイ。お前に裕一を説教する資格ねえぞ。

まだ理解できたのは里美。仕事が上手くいかず、彼氏はヒモで生活費を入れるどころか自分の金を貪っているだけ。裕一・智子・浩二・伸二は「なんとなく」で関係を持っていたが、里美は確実に現状に嫌気がさしていた。そりゃ逃げたくなる。

 

「とにかくキモイ」と(演技の観点から)好評だった裕一については、「言うほどキモイか?」と言うのが率直な感想。結構ああ言う喋り方の男って居ない?私の周りにだけいるのか?あ、でも働いてもいないくせに、自分自身がオシャレに無頓着なくせに、里美のビジュアルについてどうのこうの言い出したのはキモイ以前に人として引いた。あそこで里美がブチギレたのが、今作で最も感情移入できた場面かもしれない。裕一をそんなにキモイと思わなかった一方で、1 mmも可愛いとも思わなかった。たとえ顔と体が髙木雄也でも。

因みに、回を重ねるごとにこのキモさは薄れていたらしい。観る側が慣れていったのか、それとも演技が変わっていったのかは私は知る由もない。

 

「観た人が歩んだ人生によって感想が全然変わってくる」とのことなので、私個人としての人生を踏まえた率直な感想を述べよう(無駄に壮大な前振り)観劇を終えてのストーリーについての率直な感想としては、「おそらくこの劇中のような出来事は日本のどこかで起きているのだろうが、自分は絶対にそっち側には行きたくない」だった。確かに人間だれしも現実逃避して逃げたくなることはあるし、実際私も逃げてしまったこともある。そういう意味でのリアリティは確かにあった。ただし、逃げていいことと悪いことの分別は大の大人ならつけられなければならないし、逃げたことで生じた損失はきちんと自己責任で埋めるべきだと思う。だから「誰かとヤりたい」と思ったらお金を稼いで風俗に行けばいいし、不倫相手との子供が出来て降ろすなら配偶者と正直に話をつけてとっととお金を工面すればいい。自分ならそう考えてしまう。それをしなかった結果、おそらく遠い未来で一番不幸になるのは恐らく一番罪のない裕一と智子の間の子供だろうから。

私は自分自身がそんなに変われたと感じた経験がないこともあって、「三つ子の魂百まで」だと思っている。浮気や不倫は病気で治らないから絶対に繰り返す。浮気をされようもんなら即別れる。不倫なら慰謝料をぶんどって出来る限りの社会的制裁を下して離婚すると思う。合法的に性欲を発散させる手段なんていくらでもあるのに、わざわざ不貞行為に走る理由が分からない。だからこそ貞操観念ゆるゆるの登場人物たちにはまるで感情移入が出来なかったし、一周回ってかなり俯瞰でこの劇を見ることが出来たと感じた。

 

そして特筆すべきことは「尻と前貼り」だね。多分ジャニーズ事務所はオファーが来た段階でどういう演技をする作品か聞かされているはずだから、この作品に髙木くんを出すことを事務所は許可したわけで。よくジャニーズ事務所はこの舞台への出演を許可したと思ったよ。ananのセクシー系特集でさえ尻を全部出した人はなかなかいないのに、ファンの前で生尻晒したジャニーズってほぼいないでしょ!?(少なくとも私は聞いたことがない)(関ジャニのユニット曲でふんどし一丁があったのは知ってる)しかも、後ろだけかと思ったら前貼り貼った状態で前も向くからね。ほぼ全裸よ。裸を晒すだけでなくがっつりベッドシーンもあるし。ほぼ自担のAVを見せられた髙木担ってどんな気持ちなんだろう…(素朴な疑問)。先ほど「この舞台を俯瞰で観られた」と言ったけど、客観的に観すぎて率直に初めて生で見るジャニーズの生尻に「おおおおおお…!!!」となってしまったことは反省していない。

 

冒頭で述べたように、上演期間の前半は一部キャストが代役で行われて、準主役とも言える智子を、裕子役の呉城さんが演じられていた。智子役の奥貫さんは無意識のうちに年下の男性をもてあそんでしまうようなまさに"魔性の女"だったのに対し、裕子役として見た呉城さんはかなりカジュアルでフランクな印象を受けたので、呉城さんが演じる智子が全然想像つかなかったし、代役バージョンも観てみたかった(両方見た人曰く、全然違うらしい。そりゃそうだ)。

 

最後に髙木くんの演技について。一言で言うと「一度観ただけでちゃんと印象に残る演技が出来るようになった」なと。昨年の「ブロードウェイと銃弾」はミュージカルで演技以外の歌やダンスの要素も入ってくるし、配信での鑑賞で一概には比べられないので、その前に観た「クイーンエリザベス」を思い出してみると、当時はまだまだ舞台の経験値が少なくて、主役の大地真央さんや準主役の長野博くん(当時V6)に完全に押されていて、印象に残っている場面と言えば2幕で大地真央さん演じるエリザベスを喜ばせるお遊戯をしていたところくらい(笑) それに対して今作では完全に菅原裕一がどういう人物だったか、作中でどういう行動をしていたかが鮮明に思い出せる。かなりの成長だと思う。

 

そんな髙木くんの成長とナイス生尻に舌を巻いた舞台だった(過去最低レベルの総括をするな)

 

では。