終わらないで Fantasy

どんな宝石より 心奪われたんだ

【ネタバレあり】平成最後の春〜しがないジャニオタがミュージカル「ハル」の初日公演を観劇した件。

どうも。

 

赤坂駅前の桜は満開の一方で、4月とは思えないほど冷え込んだ平成31年4月1日。平成の次の年号が「令和」であることが発表されたこの日に、奇しくも平成の年号を冠するグループ「Hey!Say!JUMP」のメンバーである薮宏太くんが主演のミュージカル「ハル」赤坂ACTシアターまで観に行った。

 

今回、奇跡的に初日公演の、しかもかなりいい席のチケットを入手できた。自担でありHey!Say!JUMPトップの歌唱力を誇る薮くんの10年ぶりのミュージカルで、尚且つジャニーズJr.の不動の推しである七五三掛龍也くんも出演すると言うことで、個人的に相当楽しみにしていた。

 

そもそも舞台自体観に行ったことが殆どない上、ミュージカル(知り合いが出演すると言うことで観に行ったものを除く)となると、小学生の時に学校で観に行った劇団四季以来。それくらい、普段はミュージカルに触れる機会が全くと言っていいほど無い。そんなただの俳優目当てで観に行ったしがないジャニオタの拙い感想であることを承知の上で読んで頂けたら幸いである。

 

また、ここからは物語の内容に触れる(ネタバレする)ので、閲覧は自己責任で…。

 

先ず、物語の概要をパンフレットから引用する。

小さな田舎町で暮らす高校生の石坂ハル(薮くん)。幼い頃に患った大きな病を乗り越えたが、どこが虚しさを抱えながら毎日を過ごしていた。父を亡くした後、女手一つで育ててくれた母・千鶴(安蘭けいさん)の気持ちを思うと、そんな本音は打ち明けることができない。気づけば幼なじみの修一(七五三掛くん)や同級生にも、心を開けなくなっていた。ハルを気遣い、祖母(梅沢昌代さん)はやりたいことを思いっきりやるよう優しく背中を押す。

そんなときハルは、ボクシングに夢中な少女・真由(北乃きいさん)に出逢い、その姿に憧れを抱く。この町にボクシングジムはあるのかと真由に尋ねられ、ハルは神尾ジムへ案内する。オーナーの神尾(栗原英雄さん)は、ジムに来たハルを見ると理由も言わずに入会を断った。

真由に導かれるようにボクシングに惹かれていくハル。だが、千鶴はハルがボクシングやることに大反対。亡くなったハルの父と神尾の間には過去に因縁があった。

ボクシングを諦め、心を閉ざすハル。しかし「あなたを知りたい」と言う真由の言葉に触れて、お互いの過去を語り合い、自分の本当の思いを吐露する。真由と一緒にボクシングを続けることを決めたハルは、誰かと本気でぶつかることを望むようになっていく。

バブル崩壊後、過去の傷跡に苦しみ、葛藤を抱えながら生きてきた高野(今井清隆さん)や町の人々。ハルの情熱は、そんな人々の気持ちをも変え始めて……

と言うのが後半に入ったあたりまでの内容。その後も色々とあるのだが、簡単に結末だけを言ってしまうと、真由は実は5年前にボクシングの試合中の事故で帰らぬ人となり、その心臓がハルに提供された。そう打ち明けると、真由はハルの前から姿を消す。物語の最初からこの結末に関する伏線はいくつも張られており、最後に悲しくも明白に物語が繋がって終わる。(伏線の例:最初の手紙の相手は真由の両親、ハルは真由と同じようにボクシングにときめきを感じる、ハル以外の登場人物のセリフに真由の名前が登場しない(真由が見えていないから)、真由はやたら単独行動したがる、廃墟のテーマパークに何故か真由がいるetc.)

 

アンサンブルのポジションがよく分かってなかったんだけど、めちゃくちゃ出番が多くてびっくりした…下手したら後述の主要キャストの方より出番があるのでは…。もうミュージカルのプロが集結してるから歌やダンスの圧がすごくて、まさに圧巻だった。個人的に、パンフレットを読んでいたら、13年くらい前までにやってたNHKの「うたっておどろんぱ」の「てる」役だった照井裕隆さんが真由の父親役などで出ていたことに驚き倒した。てるくん…!!!!(教育テレビっ子)

 

細川洋平さん演じる田中は神尾ジムの落ちこぼれ3人組の1人で、常に何かに怯えていて話し方もボソボソとしている男。出番は少ないながらも、その断トツに暗いキャラはインパクト抜群だった。パンフによると、細川さんはミュージカル初挑戦らしい…!そして1978年生まれと聞いてさらに驚き。10歳くらい若く見えた。

 

藤谷理子さん演じる香織と大薮丘さん演じる優馬はハルの同級生。所謂イマドキの高校生って感じの役。藤谷さんが1995/8/6生まれ、大薮さんが1995/8/8生まれってのに感動した(そこ) リアルタメ!!!なんなら七五三掛くん(1995/6/23生まれ)もタメ!!!!なるほど、同級生役がピッタリはまっていたわけだ。

 

枝元萌さん演じる佐藤は、田中と同じく神尾ジムの落ちこぼれ3人組の1人で、ぽっちゃり&お団子ヘアで、おかずクラブのゆいPさんを連想させるような容姿。勇気を出して高野にズバッと言うシーンは見ていてスカッとした。

 

田中美央さん演じる大川も、田中、佐藤と同じく神尾ジムの落ちこぼれ3人組の1人。真っ直ぐで明るいキャラだけど、定職に就けなかったりとコンプレックスを抱えている。現代の日本人男性にもよくいそうなリアルな役どころ。突然の筋肉体操は笑ったけど(笑)

 

ここからはパンフレットのページも見開きになるメインキャストの皆さん。

 

今井清隆さん演じる高野は正義感が強く明るい朗らかな社長。一方で、人の心の痛みに鈍感で、悪気なく人を傷つけてしまうことが。舞台となっている町に建設予定だったテーマパークの不正取引を暴き、一躍町のヒーローになり、町民からは愛されている存在だが、テーマパークの建設中止がきっかけで町が衰退し始めてしまったり、不正を暴く動機が当時人気者だった神尾の揚げ足をとる為だったから、高野は不正を暴いたのを後悔している。幸せそうに見える人でも、悩みを抱えている。大川と同じようにリアルな人物像だった。個人的に、今井さんの深みのあるビブラートが好きです(そこ)。

 

梅沢昌代さん演じる(ハルの)祖母は、恐らくこの物語で真由と同じくらいハルの背中を押している、ハルにとってのキーパーソン。祖母の言葉なくしてボクシングとの出会いは生まれなかっただろう。個人的に、キャスト最年長(多分)の梅沢さんのパンフレットインタビューのお言葉が深いと思うので必読。

 

栗原英雄さん演じる神尾はハルが所属するボクシングジムのトレーナー。最初ハルがジムに所属したいと言い出した時に理由も言わず断ったのには、ハルの父親との因縁があったから、ってあるんだけど、実は物語が色々と詰め込まれすぎてて(後述)、その因縁をいまいち理解できなくて。そこだけ少し残念。ただ、舞台である街に建設予定だったテーマパークの用地の不正取引の金の運び屋で捕まったってのはわかった。

 

安蘭けいさん演じる千鶴(ハルの母)は、ハルのことを大事に思っているんだけど、大事に思いすぎて自分の感情を入れすぎてしまって、結果的にハルを苦しめていたことに気づいていない母親、とあくまで私は捉えた。多分人によって一番印象が違う登場人物だと思うし、何度か観劇することによっても印象が変わると思う。安蘭さんは宝塚OGで、私の中では昨年観に行った舞台「オセロー」に出演していた檀れいさん(同じく宝塚OG)か凄まじすぎて、物凄く楽しみにしていた女優さん。歌のシーンではやっぱり一人だけ根本的な発声法が違うなぁと。さすが宝塚トップスター。

 

北乃きいさん演じる真由は、私が今作で最も印象に残った登場人物だった。私の中では北乃さんは完全に「ZIP!」のイメージで、比較的大人しそうだと勝手に思っていたから、北乃さんと真由というアクティブガールが結びつかなかった。だけど、登場した瞬間に、他の登場人物とは一線を画すオーラを感じた。完全にそこにいたのは「北乃きいさん」ではなく「ボクシングに夢中な真由」だった。歌も声が通ってて凄かった。CDデビューしてたのは知ってたけど、北乃さんってあんなに歌えるんだね…。女優さんってやっぱり凄い。

サクラサク - YouTube←ひさびさに北乃さんの『サクラサク』を聞いてみたけど普通に上手かったわ…

 

七五三掛くん演じる修一はハルの幼馴染。ハルの登場人物の事前情報をあまり入手してなくて、勝手に「ボクシングに打ち込むハルを応援する」ポジションだと思っていたら、「ボクシングを始めたハルを最初はよく思っていない」役だったのが意外だった。自分よりサッカーが上手いハルに嫉妬心を抱きつつも、それでもハルには病気に打ち勝ってほしいと言う表裏の感情をどっちも持ち合わせている。普段は淡々としていてあまり感情は出さない七五三掛くんが感情を表に出すのを見られるのって演技仕事の醍醐味よね。修一のビジュアルは「制服を着たしめちゃん」って感じで可愛かった。中身は全然可愛くなかったけど。七五三掛くんは結構悪役が似合うと言うか、登場人物を精神的に追い詰める役が似合うと思う。淡々と喋ることがそうやって追い詰めるのに実は効果的だったり、どこか感情を掴めないあざかわ系のビジュアルも少なからず影響しているのかも。登場して一言言い残して去るだけで場の空気が一気に凍りついていた。千鶴もだけど、修一もなかなかにハルを追い詰めていたなぁ〜と思った。後、七五三掛くん普通に歌上手いよね。音全然ズレてなかった。

 

薮くん演じるハルは、もともと活発なサッカー少年だったが、病気で心臓を海外で移植してもらうことで世間的に注目を浴び、有る事無い事色々言われたことで心を閉ざしてしまった高校生。演技についてはまだまだ課題が残るなど思った。少なくとも薮くんは役になり切るために、感情を一体化させるために試行錯誤が必要な人だと思う(そのかわり歌に関しては天性の才能がある)。多分、本番を経験していくことで確実に演技が変わっていくだろうから、初日しか見られなかったのはとても寂しい。あと、正直なところ、高校生というにはなかなかビジュアル面で無理があったのがひとつ残念だったところ…(薮くんは割と実年齢より年上に見られがち)。ちょっとね、修一や香織、優馬と同い年設定はなかなか前情報がないと飲み込めない人もいたかも。その代わり、歌はマジで100点満点だった。音程が外れていないのはもちろんのこと、純粋に歌唱の技術が上がっていたし、以前と比べて表現の幅がめちゃくちゃ広がっていたのが分かった。ハルの役については、ちょっと心情の変化が急というか、まあ時間に制約がある中でいくつも山場を作らなければいけない上でしょうがないのかもしれないけど、「うわ、こいつと友達になりたくねぇ〜〜」って感じるような卑屈で根暗な性格からいきなり生き生きとし出したりするから、もう少しハルの心情変化をゆっくり描いて欲しかったという感想(これは脚本に対する感想)。

 

次に、物語に対する疑問点をいくつか(「そう言う設定だよ」と言われたらそれまでなのだが)。

 

・ハルの利き手

真由に「利き手は?」と聞かれてハルは「右!」と答えていたのだが、途中で自主トレ内容をメモするシーンではがっつり左手で書いていた(薮くんは左利き)。意外とファンは細かいところまで見てるから直したほうがいいのでは?

(2日目以降のレポを見たところ、直されていたらしい。時々うっかり左で書いた時もあったらしいけど(笑))

 

・繰り返しセリフに登場する「震災」とこの町の関係は?

町の人々のセリフに複数回「震災」(恐らく東日本大震災を指すと解釈)と言うワードが出てくるので、この物語において「震災」はキーとなるのかと思ったら、あまり関係がなさそう…?何故「震災」と言う言葉が何回も出てきたのか気になった。

 

・ハルの父の死因は?

これが1回見ただけでイマイチ飲み込めなかった。テーマパーク用地の不正取引に巻き込まれて(言い方が物騒だが)証拠隠滅のために消されたのかと思ったのだが、誰かわかった方が居たら教えて下さい。

 

・モブ女が千鶴にTwitterでハルが叩かれていることを伝えるシーンや(福島出身の)モブ女が本音をぶちまけるシーンの意図は?

ハルの試合が決まって息子の応援を呼びかける千鶴に、モブ女が「私、Twitterやってるんですけど、ハルくん結構色々言われてますよ」って伝えるシーンと、福島出身のモブ女が千鶴に「千鶴さん、ハルくんに寄付をしない方は心が貧しいって言いましたよね?私正直一人の少年に何億もかけるくらいなら被災地に寄付したほうがいいと思いました。私福島出身なんです。ふるさと奪われたんです!」って伝えるシーンががあるんだけど、「それ伝える必要ある????」って純粋にそのモブ女に疑問を持ったわ。SNSなんて自分に都合の悪い意見は見なくでいいコンテンツだから伝える意味がわからないし、(まあ千鶴の「心が貧しい」って言うのも言い過ぎだとは思うけど)千鶴だって最愛の一人息子が命の危機に晒されてたのになんてこと言うんだろう、このモブ女は流石に心が貧しすぎるだろって思った。恐らく制作側はSNSで匿名性を利用して有る事無い事言うことができる現状を描写したかったんだろうけど、このシーンはこの後のシーンに一切影響がなかったし、モブ女に率直に「ハ????」ってなっただけだった。

 

物語の全体の感想としては、恐らく色々と発達しすぎたが故に現代社会にごちゃごちゃと起こってる諸問題を描きたかったんだと思うけど、色々と描きすぎて、一つの問題に割く尺が短くて、安直な展開になっていたところもあった気がした。もう少し丁寧に描いて欲しかった箇所がいくつか。例えば、先述のようにハルの心情変化とか、あと修一の心情変化も結構急だったかも(もう少しハルと向き合うシーンが欲しかった)。

一方で、先述のように、物語の結末に向かう伏線回収は見事だった。結末で伏線を回収しきれず、色々と納得できずにモヤモヤが残る物語もあるが、ハルの結末は全くそのような引っかかりはなかった(もっと細かく見たら出てくるのかもしれないけど、私が1回見た限りでは)。

 

開演数分前に、特にこれといった変化(アナウンスがあったとか、照明が暗くなったとか)が無かったのに急に客席が静まり返ったの、異様過ぎてビックリしたんだけど、Twitterを見ていたら同じように感じた人がいて安心した。みんなこれから何が起こるのか知らないから、緊張してたのかな。そんな感じの糸が張ってるような、下手に変えてはいけないような空気が生の舞台ならではだと思った。あ、第2幕前も同じ現象が起きた。あとスタオベも無かったね。

 

そういえばハルの音楽の伴奏はなんと生のオーケストラだったんだよね。めちゃくちゃ豪華では…!?いまどきコンピュータでどんな音楽でも作れちゃう時代に、わざわざ沢山のプロのミュージシャンを使って迫力の演奏を届けてくれるの、かなり贅沢な時間だと思う。と言うか、オーケストラで自担がソロで歌うとかめちゃくちゃ幸せじゃん!!!!!(語彙)

 

流石外部の舞台、関係者がたくさん来ていた。隣のブロックに「明らかに関係者でしょう」って言うスーツの男性がズラッと座ってて圧が凄かった(笑) というか、レポを読んでビックリしたのが、初日になんと東山紀之さんが見学に来ていたらしい。確かに、幕間でトイレに並んでいた時に、関係者の人が電話で「東山さん来てます」って言ってて、「東山さんってあの東山さん…?」って思った。ただでさえ緊張する初日に大先輩が見学となると薮くんと七五三掛くんは相当緊張したのでは…お疲れ様でした。

 

まだあと2週間くらい続くということで、怪我や病気なくカンパニー全員で完走することを願ってやみません。頑張って下さい!

 

では。